東京大学 後期 1994年 第3問 (解答解説)
ある会社である工事を受注した.
その工事はまず第1工程,第2工程,検査の順に行い,3つの作業はそれぞれ1日を必要とする.
検査では第1工程,第2工程に欠陥があるかないかが分かる.
検査の結果第1工程に欠陥があれば,工事は第1工程,第2工程ともやり直し,改めて検査をする.
第1工程に欠陥がなく第2工程のみに欠陥があれば,第2工程のみやり直して検査をする.
これらの作業は日曜日を除いて引き続いて行い,検査の結果第1,第2工程ともに欠陥がなければ工事は終了する.
各工程はそれまでの経過とは独立に確率
-
を求めよ. -
を求めよ. -
のとき を満たす最小の正整数 を求めよ.
【解答】
(1)
1週間(6日)以内に作業が完了するのは以下の時である.
| 日数 | 場合 | 確率 |
|---|---|---|
| 3日 | 第一,二工程ともに失敗せず完了 | |
| 5日 | 第一工程が成功,第二工程が一回失敗 | |
| 6日 | 第一工程が失敗し二度目のトライで成功 |
表 1: 1週間以内に作業が完了する場合
したがって求める確率はこれらの和で
である.
(2)
製造工程において,検査が終わってから次の検査が終わるまでを一回の作業とまとめて考える. 製造工程の状態は以下の3つに分けることができる.
-
A 第一工程が終わっていない状態
-
B 第一工程が終わっているが第二工程が終わっていない状態
-
P 製造が完了した状態
Aの状態は3日間で一回の作業が完了し,A,B,Pの三つのいずれかに遷移する. Bの状態は2日間で一回の作業が完了し,BまたはPに遷移する.
以上の考察をベースに,新しく二つの確率を導入する.
-
週目までに第一工程が終わらない確率 -
週目までに第一工程は終了しているが第二工程が終わらない確率
ただし,
である.
また,
が成り立つ.
次に
である.
である.
| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 検査 | 第二 | 検査 | 第二 | 検査 | 第二 |
| 2 | 第二 | 検査 | 第二 | 検査 | 第二 | 検査 |
表 2: Bから始まった場合の一週間の工事の様子
以上から
を満たす.
(式2),(式3),(式4)を代入して
となる.この漸化式を変形して
の形にすることを考えると,係数比較して
とすればよく,
を得る.初期条件は(式2)で与えられているから,漸化式を繰り返し用いて
である.
である.
(3)
新しく
とおく.(2)の結果を代入して
だから,ここに
を得る.
だから,題意の条件を満たすには
そこで
となり,題意の条件を満たす.
以上から,求める最小の
である.
【解説】
(2)についてはいくつかの別解があるので紹介する. まず,漸化式は最初の一周目について考えることで別の立て方ができるのでこちらから見ていこう.
-
(確率 , 6日かかる) -
(確率 , 6日かかる) -
(確率 , 5日かかる)
と書ける.以下は普通に漸化式を解けば良いが,面白いことに解答と異なる形の漸化式になっている.
しかし,以下これを解けば全く同じ一般項が出てくることを確かめよう. 漸化式を変形すると
だから,漸化式を繰り返し用いて,初期条件(式2)を代入すると
となり,同じ一般項を得た.
この方法は(本質的にやっていることは同じだが)
他の別解として,以下のように漸化式を立てずとも解けるが,かなり計算量が多くなる. 参考までに示すが漸化式の計算コストの低さを体感できるだろう.